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膨大な肺炎死亡例では、病原ウイルス(当時はまだ不明であったが)そのものによる肺炎もあったであろうが、細菌学的検査でインフルエンザ菌、レンサ球菌、ブドウ球菌、肺炎球菌などが分離されており(当時はインフルエンザ菌が病原に擬せられていたので細菌学的検査は精力的に行われた)、現在では当時の肺炎の多くはこうした細菌の二次感染によるものであったと推測され、したがって抗菌療法が発達普及した現在であれば、こうした肺炎合併症の治療はかなり奏効したのではないか。 また、著明な循環器症状に対する強心処置その他、さらに出血に対する処置などの現状を考えれば、致死的であった症例も現在ならば救命し得るケースも少なくなかったであろう。
しかし、電撃的な経過を辿る劇症のインフルエンザでは、その一部は二次感染菌としてのブドウ球菌感染による可能性も考えられるが、現在の医療水準をもってしても治療困難な症例は少なくないはずである。 ことに現在でも高齢者のインフルエンザ肺炎では、強力な治療にもかかわらず死亡例が少なくないが灸これはむしろ感染を受ける側の加齢による変化−各臓器の予備能力の低下、潜在的に存在する臓器不全慢性諸疾患の存在など−が大きな要因であることを考えれば、今後きたるべき新型インフルエンザの大流行に対してさほど楽観的にはなれない。
ただ、1998年からわが国でも実地に用いられるようになった抗インフルエンザ剤アマンタジンの登場は、この局面に明るい見通しを与えている。 インフルエンザAに対して早期から投与を開始すればみるべき治療効果が期待できる。
スペインかぜの病原はAH1N1に属するものであったと推測されている。 また近い将来、A、Bともに有効とされる抗ニューラミ二デース(注卵本書の他の部分ではノイラミーダーゼと記載)阻害剤もインフルエンザに対する強力な武器となるであろう。
さらに神経系の合併症については、スペインかぜの流行とそれに続くいくつかの流行(同じ病原によると考えられた)の後に噌眠性脳炎が多発してインフルエンザとの関連が注意をひいたことがある。 最近のA香港型(H3N2)の流行では乳幼児の脳炎脳症が警戒されている。
こうした問題についてはまだ不明な点が多く、今後の検討が必要である。 予防については、現在ではその対策としてインフルエンザワクチンがある。
スペインかぜ当時は病原は不明のまま、インフルエンザ菌その他を病原と考えて細菌ワクチンが試みられたが、その結果は推して知るべしといったところである。

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